頭の中で考えている設計を、PC上とはいえ立体にできるのは楽しいものです。
紙とペンで書いてみても、整合性が保たれているか確証を持てないので、ピンとこなかったりします。
これから説明する手順に沿って進むだけで、こんなオリジナルのヨーヨーを作れちゃいます!
ぜひ、試してみてください。
では、さっそく説明を始めます。
長いですので、大項目ごとに休憩しながら進むようにしましょう。
まずはCADソフトを用意します。
これが無ければ始まりません。
ここでは、PTCのCreo Elements/Direct Modeling Express 6.0を用います。
利用するためにアカウントの作成が必要になりますが、無料ですし、重量まで簡単に求められるのはメリットが大きいです。
起動すると、まずこの画面が出てきます。
3D-CADソフトの基本は、『シートの上に線を引き、その線を引っ張ったり回したりすることで平面から立体を作る』です。
ヨーヨーは軸が一つですから、3Dモデルを作るのはさして難しいものではないです。
では、まずはヨーヨーの断面図を描いていきましょう。
中央にある『/W1』の表記のある四角形。
これが『シート』です。
このシートの上に線を引いていきます。
右上の『カレントWP』をクリックします。
シートが正面を向きましたね。
次に、Modelingタブの『直線/円弧』をクリック。
そしてポインタをシート上の真ん中あたりに持っていき、クリック。
ポインタを動かしてみると……
直線が引けるようになりました。
まずは、適当に線を引いてみましょう。
クリックした原点から、ポインタを右に移動させます。
小ウインドウに『角度0°』と表示され、ラインがオレンジ色になっていますね。
これで平行線が引けます。
長さは適当で良いですので、クリック。
これで線が描けました。
この線を連続して描いていくことになるのですが、その前に線の消し方を先にお教えします。
まだ、線の描画コマンドが動いていますので、左下の×をクリック。
これでコマンドを中止できます。
そして、消したい線にポインタを重ね、線の色が変わったら変わったらクリックし、Deleteキーを押します。
これで、線の消去ができます。
さて、ヨーヨーの中心線を引くところから始めていきましょう。
先ほど消した線と同様に、右に向かって直線を引きます。
これも、長さは適当で良いです。
続けて、アクセルの入るネジ穴を描きます。
M4で10mm前後のイモネジが主流ですが、今回は12mmネジに合うようにします。
ちなみに、ネジ山は省略します。
重量の誤差もあまりありませんし、工場に出す図面にも書かないものなので描く必要はありません。
M4の半分、2mmを垂直線で描きます。
先ほどの中心線から上にポインタを移動し、キーボードで『2』と打ち込んでエンターキーを押します。
同じ要領で、軸まわりの線引きを繰り返します。
ドンドンいきますね。
作業しているうちに理解が進むものと思います。
- 右に4mm
- 上に0.5mm
- 左に2mm
- 上に1mm
- 左に0.5mm
- 上に1.6mm
- 右に0.7mm
- 上に1.4mm
- 左に1mm
- 上に2.5mm
- 右に1mm
- 上に2mm
軸まわりと、仮のエッジまで出来ました。
この線分の集まりでピンときた方は、CADのセンスがあるかも?
次にウォールを描いていきます。
最後の2mm線の端を指定した状態で、スペースキーを押します。
すると、小ウインドウが出てきますね。
その中の、『角度設定』をクリックし、『125』と入力します。
これで、指定した角度で直線が引けるようになります。
今回は15.19mmの角度線を引きたいので、『15.19』と入力しましょう。
角度線が引けました。
『Modeling』タブの『円弧』をクリックし、角度線の端をクリック。
Spaceキーを押して小ウインドウを開き、先ほどと同様に『角度設定』をクリック。
『158.15』と入力。
角度が固定されますので、『11.25』と入力。
これで、円弧の角度と長さを指定できました。
最後に、円の半径『20』を入力。
この時に、描かれる円の向きをポインタ位置によって指定するようにしましょう。
先ほど描いた曲線からまた直線の連続になります。
- 左に3mm
- 下に7mm
- 右に13mm
ウォールの角度線と平行な線を引きます。
画像と同じく平行である記号が表示されたら、『12.5』と入力しましょう。
最後に真下に向かって直線を引きます。
これで線の描画は完了です!
さて、いよいよここからがメイン。
ここまでで描いた線から立体を作ります。
メインウインドウ中央にある『プル』メニューの中の『プル回転』をクリック。
立体にする事が可能な線の集合体は、画像にあるように茶色で塗りつぶされます。
もし、塗りつぶされなかった場合、どこかの線と線が繋がっていないはずです。
拡大して確認してみましょう。
回転させる際の軸を指定します。
最初に引いた中心線にポインタを合わせ、画像のように回転軸のアイコンが表示されたらクリックしましょう。
『プル』ウインドウの『角度』に、『360』と入力し、Enter。
ヨーヨーの形が現れましたね!
ここが最もテンション上がる作業だと思います。
マウスホイールを押したままマウスを動かしてみましょう。
3Dモデルをぐりぐり動かして確認できます。
次の工程に進む前に、『プル』ウインドウの左上にあるチェックアイコンをクリック。
これでプル回転の作業を確定し、3Dモデルを編集できるようになります。
各所のR面取りをつけます。
『ブレンド』をクリックし、表示されたウインドウ内の『半径』に『2』と入力しEnter。
画像の箇所にポインタを合わせてクリックすると……
R2の面取りをつけることができました。
同様に、その内側もR2面取りしてしまいましょう。
作業完了後は、チェックアイコンをクリックするのを忘れないように。
最後に、重量を調べます。
『解析』タブをクリックし、『パーツ』→『体積』と進みます。
ウインドウに『14667.37171』と表示されました。
これに、アルミの比重である『2.7』を掛けます。
14667.37171 × 2.7 = 39601.904
体積の単位が『mm^3』なので、係数100を掛けてグラムに換算しましょう。
39601.904 × 100 = 約40(g)
ヨーヨー本体左右併せて80グラム。
ベアリングとアクセルとレスポンスで大体3グラム無いくらいなので、今回製図したヨーヨーは約83グラムのようです。
ずいぶん重くて(ミョルニルの使い手以外には)使いづらそうなので、皆さんの手で調整してみてください。
ちなみにベアリングはDサイズ、レスポンスはジョーカースモール/フラグメントサイズです。
最低限の強度・回転力・ブレない形状・振りやすさ・加工のしやすさ(価格)、このバランスをいかに両立させるかが設計者の腕の見せ所です。
ぜひ、設計製図の面でも各メーカーの技術の高さを認識していただければ本望です。
最後に、良さげな設計ができたらぜひ、Twitterやメールで連絡してください!
ご依頼すべてとはいきませんが、時間があればアドバイスさせてもらいます。